向日葵の花言葉 side:リグル





その夏、太陽の畑を見つけた。
 
「うわぁ……」
 
季節は真夏。
いつも一緒に遊ぶ子達は、今日は各々用事があるらしい。
もっとも、チルノは融けかけてただけだけど…。
まあそんなわけで、今日はひとりで幻想郷を探検していた。
いつもは行かない道、行かないところに行くのはすっごくどきどきして。
迷ったりするかもしれないけど、そんな事よりも新たな発見が嬉しくって。
だから、私は探検するのが大好きだった。
…もっと美味しい水を見つけたいからっていうのもあるけど。
 
「こんな場所あったなんて知らなかったよ…」
 
そんな探検中に、今回はこの畑をみつけた。
一面の、向日葵畑。
たくさんの向日葵が全部顔を顔を太陽のほうに向けていて、まるで整列しているみたい。
そう思った。
 
我慢できなくなって、その向日葵畑の中へと進んで行く。
すっぽりと私の姿を隠してしまう位に向日葵は大きくて。
きっとみんなと来たら、かくれんぼをして遊べる。
そう思っただけでわくわくする。
 
「次は絶対みんなと来よーっと」
 
にこにこわくわくが止まらない。
楽しみが増えるって、いいな。

「あら、お客さんなんて珍しいわね」
 
唐突に聞こえてきた声に驚いてそちらを見ると、そこには一人の女性がいた。
日傘をさした、綺麗な緑髪の女性だった。
ふわり、と彼女は私の前に降り立つ。
静かに、優雅に、彼女は微笑んだ。
 
思わず、息を呑む。
 
私はただただ、見つめることしか出来なくて。
 
「私の顔に何かついてるかしら?」
「え…?あ、いえ!なんでも!!!」
 
慌てて返事をするも、動揺しまくりで。

こんな綺麗な人、初めて見た。
美しいって、この人のような人を言うんだなって思う。
ああ、そんなことしか考えられない。
 
「で?何かここに用なのかしら?」
「あ…いえ…その、ただ散歩してたらここ見つけて。素敵だなーって…」
「あら、嬉しい事言ってくれるじゃないの」
 
そういって彼女はますます笑みを深くする。

ドクッ、ドクッ、ドクッ…って、自分の心臓が暴れていた。
 
「あなた、名前は?」
 
「リ…リグルです!リグル・ナイトバグ!」
 
慌てて答えると、目の前の彼女はきょとんとした顔をする。
 
「あら…。あなたがあのリグル?」
「え?私を知ってるんですか?」
 
ふふふ、と彼女は笑うだけ。
答えは返ってこなかった。
それでもそんな彼女の表情にまた私の心臓は暴れだして。
 
「あ、あの!」
「何かしら?」
 
あがりっぱなしで恥ずかしい。
でも、聞きたい。
 
「あなたの…名前は…?」
 
私は、あなたの名前を呼びたいから。
 
私の言葉を受け、彼女は、笑う。
 
とても綺麗に、可憐に。
 
風が吹いて、心地よい。
 
ザザァ…と、音を立て、畑が揺れる。
 
ひまわりが、一斉に揺れる。
 
そして彼女は、私を見据えて。
 
  
 
「い・や」
 
 
 
とってもかわいく、彼女はそう言った。




「え…えぇぇぇぇぇぇぇえっ!?」
「なんで私があなたのような雑魚に名乗らなければいけないのかしら?」
「ざ、雑魚って…」
「あら?違ったかしら?ああ、蟲なんだから虫けらと言ったほうがよかったわね。ごめんなさい?」
「ちょ…謝るのそこじゃないでしょ?!」
「他に謝るとこなんてあったかしら…?」
「ちょっとそこ!本気で悩まないで?!」
 
ドッキドキ☆初恋はきれーなおねーさんみたいな雰囲気はどこへやら。
 
いつの間にやら微笑むドSな彼女と突っ込みまくる虫の声がひまわり畑に響き渡る。
 
蟲の統率者と花の調停者。
 
二人はそうやって出会った。
 
ここから始まる物語は、また別のお話…。





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