持ちきれない幸せを、笑顔に変えて





※この話は、全マリアリ好きに送りたいと思う





───ねぇ、ママ。どうして結婚なんてするの?
───んー…。ママは結婚してないからちょっと難しいお話なんだけど……そうね、きっとずっと一緒にいますって誓いを立てて、いっぱいいっぱい幸せになるためかな?
───幸せ?
───まだアリスちゃんにはちょっと難しいわねー。きっと大きなって、ママよりずっと大事な人が出来たらわかるわ。………そんな日が来ちゃうなんてママ寂しーっ!





いつだったか、そんな話をしてママに泣かれたことがあったっけ。
一人きりの部屋で、思わずクスりと笑ってしまった。

「アリス!」

勢い良く入って来たのは、私の大事な人。

こんな日なのに、服はヨレヨレ、髪はボサボサ。
ちょっと不満に思ったけれども、寝坊で遅れてくるなんて彼女らしいかなと思う。

「もう……魔理沙ったら遅いわよ。みんなもうとっくに揃っているのに」
「わ、悪い!昨日霊夢達から独身最後の宴会だって引っ張り出されて……。あいつ、なんで起こさないんだよ!」

そんな風に怒る魔理沙に自業自得でしょと返そうかとも思ったけれども、やめておいた。
こんな幸せな日にケンカなんて、したくないし。

必死で謝ってくるところを見ると、本当に反省しているみたいだし。

「とにかく早く着替えて?早くしないとみんなにも悪いし……」
「お、おう!」

そう言っていつもの服を脱ぎ散らかし、私の作ったタキシードを慌てて着ていく。

本当、男の子みたいなんだから……。

しかも、とびきりのやんちゃ坊主。
そんな事を考えがら、彼女の脱ぎ散らかした服を片付ける。
無意識に、また笑顔がこぼれた。

「あー!いいよいいよ、私がやるから!そんな格好でそんな事したら汚れる!!」
「大丈夫よ、このくらい」
「ダメだダメだ!いいからアリスは座ってるんだぜ!」

無理矢理座らされて、仕方がないので着慣れぬ服を着ようする魔理沙を眺める。
四苦八苦している彼女を見て、ついつい微笑んでしまってハッとする。

どうやら今日は頬の筋肉が働いてくれないみたい。
どうやっても、頬が緩んで仕方ない。

「よし、さぁ行こう!」

やっと服を着替えられたと思えば、彼女は急いで私の手を引いて早足気味に歩き出す。
そんなに急かす方がさっきなんかよりよっぽど衣装が汚れてしまうのに。

「ちょっと魔理沙!そんなに引っ張らないで!人形達が付いてこれないわ!」
「あ、ああ。ごめん、つい……」
「もう……」

アハハと苦笑する彼女に呆れ顔とため息を一つプレゼントすれば、少しシュンとしてしまった。

「もう……少しは落ち着いたら?せっかくの晴れ舞台なのに失敗しちゃうわよ?」

襟やら髪やらを整えてあげながらそう言うと、魔理沙はまた苦笑を返してくる。

「なんか今日はアリスに迷惑かけっぱなしだな……」
「あら?そんなのいつもの事じゃなくて?」

頬を掻く彼女にそう皮肉を返してやれば、それもそうかとまた苦笑。
もう、そんな顔が見たいわけじゃないのに。

「ねぇ、魔理沙」
「ん?」
「今日の私、どう?」
「どうって……そりゃあ……」

ごにょごにょと何か言いたそうに視線を逸らすのは、照れている証拠。
そんなことをしたって耳まで真っ赤でバレバレなのに。
こういうところはいつまで経っても治らないんだから……まあそこが可愛いんだけれど。

「……すごく、綺麗だ」
「ふふふ、ありがと」

少し間をおいてそう言ってくれた魔理沙に、今日一番の笑顔でそう返す。
本当、心の底から嬉しかった。
……当の本人はこっちを見ていないんだけれど。

「魔理沙はこんな綺麗なお嫁さんが貰えて幸せでしょ?」

ちょっとふざけてそう言えば、魔理沙は一瞬キョトンとして。
その後に、いつものあの笑顔。
ニヤっと不敵に笑うその顔に、ドキッとする。

あなたのその顔が見たかったなんて、口が裂けても言わないけれど。

「今、最高に幸せだ」

そんな言葉の後に視線を逸らしたのは、今度は私だった。





「さぁ、行くか!」
「えぇ、行きましょ」

二人で並んで、二人で腕を組んで、二人で扉を開ける。

そこに広がるは、二人の未来。

これがあなたとの幸せへの、最初の一歩。

これまでの人生の中でも、とびきりの笑顔で歩きだそう。



あなたとなら、きっと。
ずっと、一緒に歩けるから。





魔理沙視点




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