それでも私は





隣に、好きな人が座った。

そんなちょっとした事が嬉しくて、でも、素直に表に出せなくて。
そんな風だから、離れろなんて心にも無い事を言ってしまった。



素直に離れるあなたに、ちょっとは察しなさいよなんて勝手な事を思って。
それでも隣にいるという事実だけで、心が温かくなった。

彼女は、笑う。

今日お茶の事とか、来る途中何があったとか。

そんな話で、楽しそうに笑う。



私は静かに微笑み、ただその話に耳を傾けた。






**********





隣に、好きな人が座っている。

ただそれだけの事が嬉しくて、気恥ずかしくて。
勇気を出して縮めてみようとしたらみたら、逃げられた。



そんな仕草に、ちょっとくらいはいいだろなんて勝手な事を考えて。
それでも隣にいさせてくれるだけで、私の心はいつでも温かかった。

彼女は、笑う。

今日のお茶がどーとか、来る途中何があったんだとか。

そんな話しをしたら、笑ってくれた。



それが嬉しくて、私も笑った。





**********





隣に、好きな人が座った。

ただそれだけの事で心臓が跳ねて、顔がにやけそうになって。
気づけば近づきすぎていて、少し離れた。



少しは私の気持ちも考えてくれればいいのになんて、勝手な事を思って。
それでも隣に彼女がいるというだけで、心が弾んで。

彼女は、笑う。

今日のお茶の話や、来る途中あった話をして、笑う。

そんな彼女が可愛くて、思わず笑った。



そんな私達を見て、彼女は今日一番の笑顔で笑ってくれた。





**********





「さ、帰りましょうか」
「おお、そうだな」

そう言って二人は立ち上がる。

「あら、今日は夕飯食べて行かないのね」

そう声をかけると、二人は同時に照れたような笑い。

「あー……今日はアリスんチで……」

照れ隠しなのか、どこか明後日の方向を向きながら魔理沙がそう答えて。

「良かったら霊夢も来る?まあ、たいした物は出ないけど」

アリスはそう言って、私を夕食に誘ってくれた。

「んー……どうしようかしら……?」

正直、少し迷う。

多分ここで私が行きたいと言えば、アリスと魔理沙は歓迎してくれるのだろう。
たいした物じゃないとかいってるけど、この二人の料理は普通においしいし。
自分で作る手間も省けてすごく楽。


でもここで私が行きたいなんて言ったらあれだ。



馬に蹴られて死んでしまう。



そんな死に方、正直ごめんだ。



結論が出たところで私は意識を手元のお茶へと戻す。

今日のお茶は、彼女が来たから出したばかりのお茶。
うーん……いい香り。今日はなんて幸せな日なんだろう。



「霊夢?」

訝しげに、アリスが私に声をかける。

ああ、自己完結して二人に返事してなかったからか。

「私の事は放っといていいから早く行きなさいよ。このバカップルが」

二人の顔を見もせずにそう返してやったが、大体想像がつく。
どうせ二人そろって真っ赤。

「ま、まあ、あれだ!また明日な、霊夢!」
「ええ、じゃあまたそのうち来るわ」

そんな言葉を残して、二人の魔法使い達は自分達の家へと帰っていった。


今日は、楽しかったなー。


今日一日を振り返れば、自然と笑みがこぼれる。



今日は彼女が来てくれて、嬉しかった。
彼女が笑っていてくれて、楽しかった。



彼女の瞳が私を映さないことが、辛かった。



「……っ」



気づけば、湯飲みを持つ手に力が入り。
気づけば、頬を何かが伝い。



決してその心がこちらに向くことはないのだとわかっていても、私はまだあなたを思い続けている。

もう、忘れてしまわなければいけない感情。



それでも、私はこれを恋と呼ぶのです。



何かに期待するわけでもなく。
苦しむことも承知で。



それでも私は、これをまだ、恋と呼ぶのです。

まだ、呼びたいのです。



「……ばかだなぁ」



一人夕闇に佇む少女は、たった一言そう呟いた。





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