恋文





「は、い、け、い、あ、り、す、さ、ま……って、これじゃ変だろおおおおおおお」

書いては丸めて書いては丸めて。
気づけば机の周りは紙の山。軽くニ十枚は無駄にしているだろう。
ただ一言『好きです』だけが伝えたいのに、どうしてこうも上手くいかないのか。


そんな時だった。


――コンコン

「魔理沙ー?」


お約束と言わんばかりに、アリスが訪ねてきたのは。



「アリス?!」

声に焦って思い切り立ち上がったところで、ずるりとすべる感覚。
あっと思った時にはもう遅く、大きな音を立てその場で倒れこんでしまった。

「魔理沙?!」

その声と共に、ドアが開かれる気配。


どうしよう。どうすればいい。


悪あがきだとはわかっているけれど、必死に散らばる紙を腕の中にかき集めて。


あと一個。あと、一個なのに。


手が、届かない。


「魔理沙だいじょう――」


『ぶ』まで聞かれなかったのはのは、きっとこの片手を伸ばした格好を見て、固まったから。

「……泳ぎの練習だぜ」
「………」

苦しい言い訳に、ただ沈黙だけが返ってくる。
なんともまあ、沈黙が痛かった。


「なに?これ」
「うあああ!み、見るなああああ!!!」

少しの間の後、足元に転がる紙くずを見つけたアリスはそれに手を伸ばす。
阻止しようと必死にジタバタと動くも、間に合うはずもなく。

カサカサと、紙が開かれる音。


こんな情けない告白になるくらいなら――


「あ、アリスが好きだ!!!」


――その前に、言葉で伝えてしまえばいいじゃないか。



そぉっと上を見上げれば、真っ赤になったアリスの顔。

「……私も」

消え入るような、そんな声が聞こえた。



ひらりと、机の上の便箋が舞う。
それはまるで、役目は終わったと言っているようであった。




fin...
2011.03.21. up.

第三回マリアリ文学祭への寄稿作品(ニコニココミュニティー内生放送企画)

これもまた在り来たりな話w
泳ぎの練習てのはあれです。ほら、クロール的な……あ、やっぱだめ?(;゚Д゚)

ご拝読ありがとうございました!

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