紅葉狩り


「うおー!さすがに山の中はすごいなー!」

嬉しそうにそんな声を上げながら前を行く魔理沙に、思わず大きなため息が出てしまった。

「なんでこんな事に付き合ってるのかしら……私……」

背負わされた背中の籠は重たいし、来る途中で魔理沙と天狗の弾幕ごっこには巻き込まれるし。

どうしてこんな事になったか、なんて勿論全部魔理沙のせいだ。
紅葉狩りに行こう、なんて誘ってきたのは彼女の方。
彼女の方からこんなまともな誘いをしてきた事なんて初めてで、思わず承諾してしまった。
つまりほんの少しだけ、私は浮かれていたのだ。ちょっと、思慮が浅くなってしまう程度には。

そんな事に気付いたのは、

『ほい、じゃあこれ今日使うものな』

今朝彼女の姿を目にした、その瞬間の事だった。
つまるところ、彼女の言う紅葉狩りは本当の意味での『紅葉狩り』だったというわけだ。
まあ、狩りではなくてただの落ち葉拾いだけれども。

「ああもう……どうしてこうなるのよ……」

そんな文句を言いながらも律儀に落ち葉を拾っている自分に、少々呆れてしまう。
とはいえ、一度約束した事を投げ出すのも嫌であるし、もうこれは割り切るほかないのだ。
それに目的も一応果たせてはいるのだし。


綺麗な紅葉の中、眩しい位のあなたの笑顔。
そんなあなたを見て、あなたへの思いがまた、私の心の奥にはらりと降り積もっていく。
積もり積もって崩れてしまいそうなこの思いに、いつ、彼女は気付いてくれるのだろうか?

「見ろよアリス!大漁大漁!」
「……よかったわね」

人の気も知らずに子供のようにはしゃぐ彼女に、苦笑を返す。
どうして私は、こんな彼女を好きなのか。それだけは本当に、自分自身でも解明できない謎だ。

あ。
そういえば、彼女に聞いてない事がひとつあった。

「で、この落ち葉って何に使うのよ?」
「焼き芋。美味い芋が手に入ったって早苗が言ってたからな」
「……あ、そう」

どうやら今日の私のこの苦労は焼かれて消えてしまうようだけれども、今日の『私達流の紅葉狩り』の思い出はきっとずっと消える事はないだろう。

End.
2011.12.14. up.

2011年の秋頃雰囲気で書いてたもの。

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