天気予言


※シリアス注意※


「実はな、明日私は死ぬらしい」

そんな事を、あっさり笑って魔理沙が言うから。

「そう」

たったそれだけ、返した。

「なんだ、随分と冷たい反応だな?」

そう言ってただ、笑うから。

「だって今日はエイプリルフールじゃない」

私も微笑んで、それだけを言う。

「なんだよー!前は騙されてくれてたのにさ。これじゃあつまらんじゃないか」

唇を尖らせてそんな事を言うあなたは、以前と何も変わりなくて。
なんだか嬉しくて、寂しい。そんな気分。
『おバカね』なんて言って笑ってるはずなのに、じんわりと目頭が熱くなっていくのは何故だろう。

「アリス」

静かに私の名を呼ぶ魔理沙の視線は、窓の外にある。
青くて広い空を、魔理沙はじっと見つめいて。私はそんな彼女の瞳の中の空を、じっと見つめている。
魔理沙の瞳の中を流れていく白い雲は一体何処に向かっているのだろうか?
私の瞳には、それは映らない。

「明日はきっと、雨が降る」

遠くを見つめたまま、彼女はそんな予言をする。

「……そう」

私はそれをただ、それだけの言葉で受け止めた。

「アリス」

あなたが私を呼ぶ声は、静かに響いて、私の心に反響して。
じんわりと広がる熱は、冷める事なくただ私の心を溶かし続ける。

「私はこれからもずっと、アリスが好き」

そして時折そんな言葉で私の心を掬い上げて、持っていってしまうのだ。

「……私の方は、わからないわよ」

悔し紛れのそんな一言は、空しく寂しく響いて散っていく。

そっと、魔理沙が立ち上がる。
私はただ、それを視線で追うだけで。

「じゃあ、またな」

くしゃりと笑った魔理沙の笑顔。
私が大好きだった、魔理沙の笑顔。

「ええ、また」

それだけ言って、さようなら。
いつかまた、出会える日まで。

小さくなっていく魔理沙の背。
もう、追いかける事は出来ない。

「あなたの事、ちゃんと忘れてあげるから」

言えなかったそんな大嘘を、あなたの遠ざかる背にかける。
どうかもう届きませんようにと願って、祈って、丸めて捨てた。

ふと地面を見れば、ぽつりぽつりと水滴の痕。
どうやら魔理沙の予言よりもずっと早く、雨は降り始めたらしい。

「そんな事まで嘘だったなんて、さすがに見抜けなかったわ」

振り続ける雨の中。
もう意味のない嘘を吐いて、捨てる。

愛してた。

そんな自分の本当だけを、心に留めて。
自分の嘘を捨てた場所に、優しい優しいあなたの今日の言葉を大事にしまっておこう。

いつかまた出会えた日、あなたに返すために。ずっとずっと。

END.

2012.4.1. up.

エイプリルフールネタ。

【よろしければ何か一言どうぞ。誤字脱字報告もお待ちしております】
※お返事は本HP内メニュー、ブログにてお返しいたします。
Designed by TENKIYA
inserted by FC2 system